喜び と 秘め事 最終話


冷たく刺さる空気の中
一定のリズムの足音が廊下中に響き
外に出された息は白く色づくとすぐに無職に変わり
消えてなくなった。

先ほどまで行われていた試合や声援は
幻だったのではないかと思われるぐらい静寂で
足音がやけに大きく響きがドアの前で立ち止まると
音は消え、ドアをノックする音が響くと
中から声が聞えドアが開くと長身の男性が姿が現した。

「今、お邪魔しても大丈夫でしょうか?」

視線の中に相手の表情を入れる為、首を動かし視線を上げると
相手も視線を合わせる為、首を動かし下を見

「あぁ、大丈夫だと思うが・・・・」

返事を返すが、いったん視線を室内に動かし
雰囲気と人物の動きを見ると再び廊下に立っている人物に視線を合わせ
握っていたドアノブを押しドアを開け室内へと迎え入れた。

室内に入るにも奥には進まず、ドアを開けてくれた人物の横に立ち
微笑みながら話しかけた。

「木田さん。
 先ほどは有り難うございました」

「礼を言われる様な事はしてないと思うが・・・」

微笑みながら話しかける相手とは正反対に不愛想なのか
無表情なのか、それとも表情豊かに表している人物の横に立っている為か
表情の変化を感じさせずに言葉を返すと

「そんなことないですよ。
 あ、木田さんケガはありませんか?」
 
どこか痛い所はありませんか?

微笑んでいる表情を崩さず柔らかい口調で紡がれる言葉と
心配そうに見上げてくる視線にを向けるが

「いや、どこにもケガはないしイタイ所も無い」
 
大丈夫だ

片手を上げ心配無いと表すと


「良かったです。
 でも、どこか痛い所があれば直ぐに言って下さいね」

手に持っている救急箱を木田の視線に入る所まで
持ち上げ見せると、木田も確認したのか頷くと
先ほどの大丈夫との言葉に安心したのか木田の元から離れ
それぞれ仲の良い同士集まり話しに夢中になっている集まりの
1つに声をかけた。

「真田君、若菜君、郭くん」

高い声に自分の名前を呼ばれ、振り返ると
微笑みながら自分達を見ている少女の姿が目に入り

「なに?どうしたのちゃん?」

不思議そうに首を傾げながらに声をかけると

「どこかイタイ所はありますか?
 若菜君」

手に持っていた救急箱を見せ苦笑すると

「オレ?最初にフッ飛ばされたぐらいだし・・・
 一馬は?」

「俺は試合に出てないからケガなんて無いだろう
 英士は?」

仲間内に話しを回していく

「別にケガというケガはないけど、
 あると言えば頬を擦り剥いたぐらいだけど・・・
 そうだね、折角だから頼もうかな」

言葉を言い終わると、に背を向け
部屋の中心に置かれたベンチに腰掛けると
も郭と同じ様に動をするがベンチには座らず
かわりに持っていた救急箱を置き
フタを開けピンセットに脱脂綿を挟むと
消毒液を付けると郭の頬にある擦り傷に
軽く付け丁寧に消毒をしていると

「大丈夫ですか?
 痛かったら直ぐに言って下さいね」

少しでも痛みを感じない様に消毒をしているのものの
見ていると痛そうに見えるのか
何度も同じ言葉を言う度

大丈夫

と返す言葉も同じ言葉に近くで見ていた
若菜も真田もと郭のやり取りに苦笑しながら見ていると

「そういえば今日の夜に韓国の選手達との
 交流会があるんですよね?」

気を紛らわせる為か、今後の予定の話しし始めると
言葉をかけられた郭の表情は変わらなかったが
近くで見ていた若菜と真田両名は体を大きく揺らし
郭を視るが

「そうだけど、
 それがどうかしたの?」

今まで通りの音とリズムで言葉を返す姿に
今でとは違う行動に驚き郭とから視線を外せずにいると
の話しは続き

「色々な選手とお話が出来ればいいですよね」

使い終わった脱脂綿やピンセットを片付け
下を向きなからの言葉に
今までとは違う雰囲気を感じを受けた郭がの表情を見ようと
顔を動かすが下を向いていた為か髪の毛が邪魔をし
の表情を見る事が出来なかった。

ちゃん?」

郭同様にナニかを感じ取ったのか若菜が声をかけると
先ほどと変わらない雰囲気で返事を返し

「はい、どうかしましたか?
 あ!どこか痛みますか?」

先ほどフタを閉めた救急箱を慌てて開けるが

「イヤそうじゃないんだけど・・・」

どこか歯切れの悪い言葉に切り方に
不思議そうにが首を傾げると

「なにか気になる事でもあるの?」

若菜から言葉を受ついだ郭が言葉をかけるが

「いえ?そんな事はないんですけど・・・
 どこかオカシイですか?」

言葉をかけられたの視線は郭から若菜へ写り
真田へ写り不安そうに真田に答えを求めると

「別にオカシイとか言っている訳じゃなくてだな
 その・・・なんて言うか・・・」

何も言わずに黙って真田の答えを待っていた
真田の歯切れの悪い言葉の最後を待っているが
中々言って貰えず助けを求める様に視線を彷徨わすにも
若菜も郭もどう言葉にすればいいのか解らず
お互いに視線を合わせていると
ドアが開き手を叩く音が聞えると同時に

「今からホテルに帰りますので準備して下さい。
 ホテル到着後は韓国との交流会がありますから
 外には行かない様に」

注意を言い終わるとそれぞれ持ってきた荷物を持ち
ロッカールームから出て、乗ってきたバスに乗り込み
も郭達から離れ、手に持っていた救急箱に
クーラーボックスなどを手に持ち
部屋に入ってきた西園寺と話しをしながらバスへ乗り込んだ。

ホテル到着後もそれぞれ各部屋に入り
帰国の為に準備をしているのか
交流会の時間まで出入りする事が少なく
交流会開始10分前には全員が集まっていた。

大広間には数個の机の上に中華料理が載っており
立食パーティで始まった。

韓国語と日本語が聞えてくる中
は居心地悪そうに壁側に立っていると
ホテルの従業員がイスを持ってきてくれ
礼を言って受け取り、座っていると
同じく居心地悪そうに壁側に寄って来た小堤に声をかけ
自分が座っていたイスを進める小堤を座らせると
先ほどの従業員がイスを用意してくれ2人で座り
話をし始める

「肩は痛みますか?」

の言葉に目を開き驚くものの

「病院で痛み止めの注射をして貰ったから痛みは無いよ」

「そうですか」

安堵したのかホッと息を付くと再びが話しかけた。

他愛の無い話しをしお互い笑い合っていると
話しはの膝の上に置かれた紙袋になり

「コレですか?
 明日バレインタインなので韓国の選手に渡そう
 と思って作ってきたんです」

ありがとうの意味を込めて持ってきたんです

笑いながらの言葉に
『そういえば』と思い出し

「風習は違うだろうけど、
 受け取ってくれるんじゃないか」

頷きながらの小堤の言葉に

「そうでしょうか?」

「まぁ、手渡してみないと解らないけどな」

不安そうに聞き返してくるにハッキリと小堤が返すと

「そうですよね。
 何もしていないのに考えていても仕方ないですよね!」

頷き、席を立ち上がると小堤に頭を下げ礼を言うと
近くにいた郭の下へ行き手に持っていた袋を見せながら
言葉をかけると郭は頷きを連れユンの所へ行くと
を挟み韓国の選手1人1人へ袋に入っていたチョコを手渡し
礼を言うと、受け取る選手達も韓国語の言葉とカタコトの言葉で
礼を言われるとテレて顔を赤らめながら微笑み
進んでいく行動に日本メンバーは心なしか
落ち着き無い動きを見せ、監督である西園寺を笑わせ
GKコーチのマルコ・ルイスはため息を付き苦笑をしながらも
の行動に微笑みながら見ていると
いつの間にか終了の時間を向かえ解散の声がかかると
両者別れの挨拶をすると
韓国選手を見送ると各自部屋に戻る中
中身が無くなった袋を持ったの行動を気にかけながら
部屋へ戻るにも全員の思いは

本番は明日

と、期待を胸にベットに入った。

翌朝、ホテルを後にし見送りに着ていたユン達と合流をすると
は足早にユン達の元へかけて行った。

「おはようごさいます。ユン君」

「おはよう、

お互いに微笑みながら挨拶を交わすと

「ねぇ、

手を動かし近くに来る様に促すと
は手の動きに惹かれるようにユンに近づくと
の耳近くに顔を持って行き
口の動きと声が聞えないように手で自分の口を隠し
ナイショ話をし始める。

ユンから

からユンへ

お互いに小さな声と相手に耳に手を当て話す言葉は
面白いのか両者は笑いあっている。

誰しもか興味を引かれる光景に
どにかして話しを聞き取りたいがそんな事をしてしまえば
の信頼を失いう事は眼に見て解っており
今までであったら行動に出ているであろう郭も
行動を起さず只2人お光景を見ているだけであった

搭乗時刻まで2人きりで話しをしていた
将に声をかけられ、ユンに別れの挨拶を言うと
その場を離れ将の下へと走っていった。

行きとは違い、東京から九州へと帰るのか
同じ飛行機に乗り東京へと帰ってきた
兄である将と話しこんでおり
将以外は遠くから見ているだけのフライト時間が過ぎ去り
空港に着くと西園寺からの話しがあったがすぐさま
解散の言葉がかかり、遠征での疲れがある体はすぐさま
自室でゆっくりを指示を出しているにも
からのチョコが気になり用事が無いにもかかわらず
のんびりと空港にいる

直ぐに九州に帰るのでは?

と言う疑問が浮かび上がり慌てて行動を起そうと動き出すが

「もし、よろしければ一緒に夕ゴハンを食べませんか?」

振り返ったは微笑みながら全員に言葉をかけるが
動きだそうとしていた所にかけられた言葉にすぐに反応が出来ず
間が出来てしまった。

「あの、もし宜しければですのでダメでしたら断って下さい」

間があった事に『用事が入っている』と考えついた
急ぎ言葉を続けるが

「行く!」

との、言葉に圧倒されながらも頷くと
空港から離れ桜上水へと向かった。

途中
「夕ゴハンの買い物をしたい」

と、言い出したと将に頷き買い物を済ませると
数人が買い物袋を持ち風祭家へと入っていく。

十数人が入れば窮屈な感じが出始め
苦笑しながら誤るに気にしない様に言葉をかけると
準備に取り掛かると言葉を残しキッチンへ姿を消すと
お盆にコップを乗せ姿を現した。

から差し出されたコップを受け取り
口を付けてみると
程よく苦味を感じるコーヒーの味が広がるにも
どこか甘さを感じ誰もが再びコーヒーに口を付けた。

「どうですか?」

恐る恐るかけられる言葉に

「美味しいよ。
 でも、普通のコーヒーじゃないよね?」

何か甘いものが入っているんだけど・・・・

椎名が微笑みながら感想を言うと

「はい。チョコが入っているんですよ」

美味しいと言われたのが嬉しかったのか、椎名に笑いながら
聞かれた質問を返すと

「ふ〜ん、チョコねぇ・・・」

中に入っているモノを聞かされ驚くにも
意外な隠し味に驚きながらも、
美味しい事には変わらないコーヒーを飲み
色々な飲み方があるのだと納得をすると
は再びキッチンへと入っていった。

それから小一時間立つ頃には
テーブルの上に色々な料理が並び
それぞれが楽しそうに食事をし
話をしているとが大きな荷物を持ち
慌しくしていると

「あの、私今日の新幹線で帰らなきゃならないので
 コレで失礼します。
 あ、もし良かったらゆっくりして言って下さい」

言い残すと大慌てで部屋を出て玄関けと向かうと
見送りにの後を付いていた将と言葉をかわすと
パタパタと走り帰っていった。

部屋にいたメンバーも余りにも唐突な出来事に
動く事も出来ずとの別れをすると
部屋に帰ってきた将の動きでようやく自体を理解し
後片付けをし始めすぐさま解散となった。

一方九州に帰った
編み棒を持ち本と交互見て毛糸を動かしていると
受信を知らせる音が鳴り
手を止め、受話器をとると

『郭と申しますけど、さんはご在宅でしょうか?』

「こんばんわ郭くん。です」

昨日きいた人物の声に不思議に思いながらも話しかける

『今、大丈夫?』

相手の都合に配慮する言葉に
大丈夫だと答えると

『昨日はご馳走様でした。
 忙しかったのに、なんだか悪い事をしたみたいで』

「いえ、そんなこと無いです。
 私の方こそゴメンナサイ・・・・
 本当はもう少しゆっくり出来れば良かったんですけど」

『そんなこと無いよ。無事家にたどり着けて良かった』

他愛の無い話しが続き

『そう言えば、空港でユンと話しをしていたみたいだけど
 また、ユンが無理を言ったんじゃない?』

「そんなこと無いですよ」

『そう?ならいいんだけどちゃんは優しいから
 ユンが付け上がらなきゃいいんだけど・・・』

「大丈夫ですよ。
 マフラーのお礼とスペインに行くかもしれない
 と言う話しをしていたんです」

『スペイン?』

「はい。
 なんだかスペインのどこかにチームの誘いを受けた
 と、言ってました」

『へ〜ぇ、初耳だな・・・
 他にも色々話しをしんでしょ?』

「はい。しましたよ」

『何を話したの?』

「えっとですね・・・秘密です」

『ユンと約束したの?』

「はい」

『そう。ならしかたないか・・・』

「ごめんなさい」

ちゃんが誤る事はないよ』

「そうでしょうか?」

『そうだよ。ま、後はユンにでも聞くよ
 さて、あんまり長話も良くないからそろそろ切らせて貰うよ』

風邪に気をつけて

とお互い言葉を繋ぐと電話を切り
は再び編み棒を手に持ち毛糸を編み上げていった。


数日後

藍色のマフラーが郭の手元に届いた頃
郭はユンとの電話でお互いの立場を話し
秘密にされている話しを聞きだそうとするにも
軽く交わされユンからも話しが聞けず
苛立ちと募らせるが、視界に入ったマフラーと手紙に

まぁ、いいか・・・・

と、ため息を付き電話を切った。

ふぅ、確認できたのはユンの気持ちと
自分の気持ち

遠距離なんだからナイショぐらい許そうか
ユンに負ける気はまったく無いしね